『ユーコさん勝手におしゃべり』 バックナンバー目次

3月28日
 東京都知事選の投票ハガキが来る。ハガキが来るだけで、無力感におそわれる。自分自身の考えを、自分自身でもハッキリと支持できない。一つの意見には裏側がある。どちらを推しても裏側に心ひかれる。 「正しい」ということのうさんくささに失望しかけている。何千年間も、命を賭けて戦争し続けても、解決つかない。


3月22日
 TVニュースで天気予報を見る。
「今日は朝からどんよりした曇りで、真冬並の寒さとなっています。」と言う。
「最高気温は8度となっており…」 ああ、今日は寒かったのか、と気付く。
 お風呂場の窓辺で水に挿しておいた観葉植物は根を出してきた。外ではパンジーが咲き競っている。チューリップはつぼみを見せはじめた。何日か晴天が続き、土が乾くと木々が水をほしがるようになってきて、気分はずい分「春」に傾いてきた。お昼の天気予報で言われるまで、今日が寒いということに気付かなかった。不思議なようだが本当だ。桜前線が動き出した。そのうち確実にその線がやってくるという予感が、「8度」を感じさせないのだろうか。

3月20日
 今一番春を感じるものは、あじさいの葉。去年の5月頃、小さな植木鉢にはいったあじさいを買った。少し大きめの鉢に入れ替え花を楽しんだ。秋、あじさいの葉は黒くなり、次々落ちた。弱ったものから取り除いてやり、寒くなるにつれ、ハゲボーズになった。
 年が明けて小さな芽を宿したなと思ったら、ある日、いきなり青々としている。「あらまぁ 急に大きくなっちゃって」という感じだ。
 「そうなの、もう一年生になるのね」なんて感慨深げに言って、頭をなでてやりたいような気になる。

3月14日
 あったかい日がやってきました。本日3月14日。思えば不遇の三月でした。雨、風、底冷えの日が続き、早春のことばも浮かばぬような日々でした。自身にプログラミングされた予定表により、きまじめに花をつけた沈丁花や桃も、次々ほころびる様を立ち止まって見ることなく過ぎてしまいました。気温10度を超えぬ日が続きましたが、今日は13度まで上がり、ふらふらと外へ出ると、もう木蓮がふくらんでいました。
 皆さんのまわりの春は、いかがですか?

3月12日
 「かんなん なんじを玉にす」
 小学校を卒業する時もらった寄せ書きの色紙に書かれていたことばだ。今は色紙自体どうしたかわからない。そのことばだけが心に残っている。小学校一年生の時担任だった年輩の女の先生が、長く低学年担任だったらしい読み易い字で書いてくださった。
 もらった時、意味がわからなかった。母に「これ何? どういうイミ?」と聞いたが「さぁ、わからないね」と言われた。特に調べるわけでもなく、それはそれきりになった。けれど呪文の様に、このわけのわからないことばは心にひっかかり、いつの間にか座右の銘になっていた。
 「艱難 汝を玉にす」
 誰かを応援したい時や、自分が困難なことに出会った時、心の中で言う。日々のつらさは全て、心にまく種だ。ただ「ガンバレ」と言ったり言われたりするより、このことばは効く気がする。
 読んだり見たりした瞬間から心をとらえ、その後ずっと好きでいることばもある。私にとっては八木重吉の詩群—。 でも、ねぇ先生、先生のことばは数十年を経て、わたしのことばになりました。

3月9日
 古い雑誌を見ることがよくある。 古本屋は店によって扱う本が様々なので、各店作業も様々だと思うが、「本をしばる」ことが仕事の一環なのは多分共通だ。入荷した本の中からこの世に残るものと残らないものは、各店の残したいものと残したくないものでもある。古本は全て買い上げなので、書棚には本屋が残したいと思ったものだけがささっている。本を捨てることは古書店の仕事のひとつだ。
 店主が作業をしていると、足元に本の小山ができる。ひと仕事終わるとそれらはしばって廃棄される。昔の週刊誌なんかが入っていることがあり、しばられる前にそれをつまんでパラパラ読むとけっこうおもしろい。新製品の紹介や広告に時代を感じることもあるが、逆に今と変らない内容のものもある。最新号じゃなくても雑誌は楽しめる、というのが最近の発見。そういえば、引越しや模様替えのとき出てきた古新聞なんかも同じだよね。情報を何度も使いまわしつつ、それと気付かせない仕組みになっているのかな。

3月5日
 3月は嵐とともにやってきた。1日から雨が降り、翌日は風が吹き、強くなり、3日は春一番のち雨だった。2月の後半から「もう咲くよ、もう咲くよ」と話しかけてくれていた近所の沈丁花の最初の一輪のほころびを見た翌日からの悪天候で、まだその先の話をきけていない。しかも寒い。2月より少し寒いようで、今朝はプランターにびっしり霜柱がたった。
 でも、でもね、今まで台所にただおとなしくぶら下がっていたにんにくたちが、このところ盛んに芽を出しているのよ。
「こいつらがこんなところで春を感じている。」と、思わず笑みがこぼれてしまうのでした。

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