『ユーコさん勝手におしゃべり』 バックナンバー目次

6月29日
 貸したのに返ってこない、借りたのに返し忘れたといえば、筆頭に上がるのが本だと思う。私の思い出の中にも一つある。小学生の頃、本はムーミン、ハードカバーのまんが本だった。相手の子の名前はフルネームで漢字まで覚えている。本の色やカラーページがあったことも覚えているのに、なぜかただ一点、私が借りてそのまま返さなかったのか、それとも貸したら返ってこなかったのかだけが思い出せない。それが一番肝腎な点だろうと思うだが、記憶なんてあいまいなものだ。その子の家のそばを通りかかる時に、「○○ちゃんもあのこと覚えているかな」とその時だけ周りの空気が小学生の頃に戻ったような気分になる。

6月22日
 我家のうさぎは最近めっきり食欲がない。少し前までは、りんごやにんじんの皮を持っていくと全身で喜びを表わしていたが、このところ食物には興味がない。それより恋がしたいのだ。「恋がしたい 恋がしたい 恋がしたい!!」とじだんだ踏んで訴えている。が、今だ雌うさぎを見たこともない。外では猫の恋鳴きが始まった。誰が聞いていようとお構いなく、「ナ〜オゥン」と色気を振りまいている。猫の恋はあからさまでわかりやすい。子供の頃、窓ガラス越しに庭での恋愛劇の一部始終をみていたことがある。例の鳴き方でむつまじく語り合うオスとメス。さて、そろそろいたそうかという時に、もう一匹オスが来た。堂々たる体躯で額に天下御免の向う傷があるような奴が、自信満々声をかける。さっきまで目の前のオスといい感じだったメスは、何のあとくされもなく天下御免の向う傷について行ってしまった。「すごいなぁ、世の中こんなものか」と子供の私を納得させる、妙に説得力のあるシーンだった。
 私が子供の頃窓越しに見た景色を、人間はずい分引き伸ばして、文化活動として行なっている。何ヶ月もの間たくさんの人をひきつけて、泣かせたりハラハラさせてりするTVドラマも、基本的には私が窓ガラス越しに見た数十分の景色と同じ本能のなせる業だと思うと、人間て何てしゃらくさいのかしら、と思えたりする。

6月12日
 自分を待っててくれるものがあるっていいよね。昨日まで私にとってそれは二鉢の紫陽花だった。春に買った紫陽花が思いのほか大きくなって、毎朝毎夕お水を待っていた。「紫陽花はお水がたくさん必要だよ」とは聞いていたけれど、本当に水遣りをサボるとケチョンとしてしまい、これでもかというほど鉢いっぱいにお水をやるとたくさんの生き生きとした花で応えてくれる。毎朝「今日も待ってるな」とドアを開けて晴れた空を見上げながらお水をやっていた。そして今日、自然の流れで梅雨がきた。夕べからの雨で紫陽花は自力で生き生き。私は、きれいだね、と声をかけるだけ。今まで私を紫陽花が待っていると思っていたけれど、私の方が私を待っているものに癒されていたんだな、と気付いた。水撒きが必要でない日が続いても、「かわいいね、よく咲いたね」と声をかけて、花が咲くのを私が待ってるよと花たちに伝え続けよう。

6月8日
 もう、サッカーでサッカーで。と、話を書き始めようと思ってからはや一週間がたちました。このおしゃべりを書く余裕もないほど目と心はサッカーでした。Jリーグ発足第1試合ヴェルディ対マリノス戦から、大きな試合は欠かさずTV観戦していました。いつでもその時々に心ときめく選手がいて観戦を楽しんできました。でもやはりワールドカップ自国開催は今までとは全然違う。なんたって、リアルタイムだから。興味があっても、試合開始が夜中だったり明け方だったりすると、次の日ニュースのダイジェストで見ればいいやと思うけど、こう毎日ちょうどいい時間に放映されると普段見ない試合でもつい見てしまう。寝不足にはならないはずなんだけど、1日数時間をTVにとられると、なんだか毎日がやたら忙しい。うれしい悲鳴です。自分にできないことをしている人がいる、それもこんなにたくさん、それだけで、ものすごいエネルギーを感じる。

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