ユーコさん勝手におしゃべり

6月23日
 時計草が、毎日「ポカッ」「ポカッ」と咲く季節になった。つぼみがふくらみ、色づき、期待を持たせて咲く花と違い、時計草は空中に伸ばしたつるの途中のつぼみは咲く前日まで緑色。順不同に、思わぬところでハデな花を「ポカッ」と開いていて、毎朝楽しみを与えてくれる。
 梅雨まっさなか、鳥たちは子育てに忙しい時期だ。ここ数日は、カラスが、様々な秩序の崩壊を狙っているかのように騒がしく鳴きかわしている。電柱やビルの上から周りを見渡し、ワッサワッサと羽根を広げて飛ぶ。少しうるさいと思っていたが、「カラスの子」の童謡を思い出し、
 「からすなぜ鳴くの からすは山に
 かわいい七つの子があるからよ」
と口ずさんでみた。「可愛い 可愛い」と鳴いているのかと思えば、それ程憎らしくもなくなった。 幼い頃
 「カラスの赤ちゃんなぜ鳴くの
 コケコッコのおばさんに 赤いお帽子ほしいよ
 赤いおくつもほしいよ と かあかあ鳴くのね」
 という歌も歌ったな。山からカラスを追いたて、ゴミでカラスの肉体を肥大化させたのは人間の方であった。子育て終るまで、少し我慢するよ。
 できれば、プランターの青虫、みんな食べておくれ。

6月10日
 梅雨入りが告知され、花菖蒲の時期となった。いつも静かな堀切菖蒲園界隈も人通りが増えた。先ほど、本を買いに来たお客様が、
 「何で、今日はこんなに人が多いんですか」 と、店番している店主に声をかけた。店主が
 「菖蒲祭だからじゃないですかね。今が見頃ですよ。」 と答えた。 おじ様それには答えず、「月に一度位、所用で堀切に来ているんだけど、お宅はおもしろい本があるね」 と、カバンの中のサイフを捜しながら話を続ける。やっとサイフがみつかって、
 「最近のカバンは、入れるとこがやたらあって、どこに入れたかわかんなくなっちゃって困っちゃうね」
 と言ってお金を出した。
 「堀切菖蒲園」駅まで来ても、菖蒲とはかかわりなく日常を送る人もいる。季節に関わらずいつもの暮らしを送る、というのも、また良し、だ。
 「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」とは逆の平穏があるのかもしれない。季節に踊り、梅雨直前の晴れ間をぬうようにやりくりし、潮来や佐原まで花菖蒲を見に行った自分と対比。
 あれもよし、これも正解、の人それぞれの人生だから。

6月9日
 朝、おいしいコーヒーが入った日は、一日気分がいい。日に3・4回サイフォンでコーヒーをいれる。同じようにいれたつもりでもちょっとずつ違う。それを楽しみたくて、分量や時間は計らない。おいしく入ったときは香りでわかる。カップに入れる時に色を見て確信する。口に含む前からうれしく、口に入れたらもっと、うれしい。
 そして今日は仕事中にもよいことがあった。本日発送予定の本を確認中に店主が、「この本、函の背焼は書いてあるか」と聞いた。詳細欄には「小口シミ」しかなかった。お客様に背が焼けている旨連絡をとる。こちらの表記もれなので、手数をとらせて申し訳ない気持で返信を待った。すると程なくメールが返ってきた。
 「…実は、この本を受け取ってからメールするつもりでしたが、5・6年前に一度、大変ご親切なご対応をいただきました。この度、貴店でお取り扱いの本を購入することができますことを、大変嬉しく思っております。」 とある。
 直接売買には至らなかったたぶん小さなやりとりを、覚えていてくださった方がいて、こうしてまた本を介して出会えるなんて—。
 「情けは人の為ならず」なんだなあ。今日は、良い日、だった。

6月5日
 6月がやって来た。菖蒲の季節、薔薇のとき。
 地元堀切も菖蒲祭がはじまって、いつもより街に人通りが多い。店舗脇のプランターは今、春と夏が融合している。(こんなかんじ)
 街も花壇もにぎやかに、梅雨入り前のひとときを楽しんでいる。

2006年5月のユーコさん勝手におしゃべり
2006年4月のユーコさん勝手におしゃべり
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