ユーコさん勝手におしゃべり |
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4月28日 うちのお店は葛飾区堀切というところにある。すぐとなり町は小菅だ。収監中の堀江氏が保釈されるというので昨日は朝から上空にヘリコプターがいた。「今日中に保釈の見込みです」というのに、何も朝から飛ばなくてもと思うが、何の用があるのだかひっきりなしに飛んでいる。車で出かけ夕方堀切に戻ると、ヘリコプターは更に増え、あちこちでバリバリプロペラ音をさせている。結局、夜すっかり彼が出てしまうまでひきもきらず飛んでいた。在京のテレビ局や新聞社の数だけ、それぞれ高いガソリン代を使ってヘリを飛ばす。そこまでして国民はこぞって彼の一挙手一投足を見たいのだろうか。六本木ヒルズへとヘリは彼の車について行き、店の上空は静かになった。「今日保釈されました」とことばで言ってくれるだけでも良かったのでは—。 最近の身近な話題は、郵便配達員さんがかわったこと。4月は始まりの季節だ。少し前、いつもの郵便配達の人について新人さんが研修していた。そして1週間くらい前に、その新人氏が一人立ちしたらしい。一軒一軒ポスト表記と宛名を確認して配っている姿が遠くから見えた。「大変そうだなぁ」と思って、店の前の道をバイクの音が鳴ったりとまったりするのを聞いていた。お隣の前でとまったので、外に出て、「ごくろうさま」と手渡しで手紙束を受け取った。そしたら4月始めに客船飛鳥IIで旅に出た人からのエアメールが入っていて、二重にうれしかった。そういえば、今日来た宅配便のお兄さんもいつもの人じゃなかった。新芽がつぎつぎ出て、花壇がにぎやかになる季節、店の横でもすずらんの最初のひとつが咲いています。赤い薔薇もつぼみを見せてくれて、新たな一歩を応援しているようです。 4月18日 昨年はひとつも花を持たず、私を心配させたさつきが、今年はまたたくさん咲いてくれた。冬の寒さゆえか芽の出るのが遅く、気を揉んだすずらんが、去年より数を増やしかわいいつぼみを見せてくれる。 花粉症マスクの人が減ってきたなと思っていたら、今日はもう日傘の人を見た。季節の進みを感じるたびに何だかワクワクする。花を終えた沈丁花の鉢位置を、すっかり葉のたくましくなったあじさいの鉢と交換する。つる性の山あじさいは買ってから数年になるがまだ一度も花をつけてくれない。今年こそはと期待している。 先日お店によく来てくれるお客さんが、「うちの庭が花盛りだから見においでよ」と思いがけず誘ってくれた。小さな池があり、池わきの庭石の上に骨董屋さんで買ったというよしのぼりやサワガニのオブジェが乗っている。私のように一年草の草花を適当に配置する式ではなく、庭木を長くいつくしみ、雌雄のある木はオスメスちゃんと並べて植える、という本当の庭である。 向いている方向は違うし、いつも本と著者のことばかりで、植物の話もしたことはないけれど、花好きと思っていてくれたのかな、とうれしいひとときでした。 4月14日 2日続けて雨上がりの朝を迎えた。夜に降った雨で、草花がみな 「さぁ見てくれ」と胸をはっている。昨日、使わなくなった陶製の傘立てをプランターにみたてて、夏用にサフィニアの苗を植え込んだ。雨の間にプランを練り苗の買出しに行っておいたのだ。変化するプランターたちに声をかけてゆくのが忙しい季節になった。 昨日、雑誌の「作家年賀状一覧」掲載用の年賀状に「また 来年!」と書いてしまって、見た人から「また来年って、今年はどうするの」と聞かれたという作家のエッセイを読んだ。 それで、「アレ」と気付いたのだが、私の前回4月9日のこの頁も、「先週はおでかけウィークだった。…来週は 園芸作業ウィークにするか」となっている。「今週」が、ない。日曜日に書いたところが落とし穴だった。土日は「週末」というのに、カレンダーはたいてい日曜から始まっている。日曜は週の終りなのか、始まりなのか、そういえばよくわからない。 4月9日 先週はおでかけウィークだった。火曜日に、客船飛鳥IIでクルーズする人を見送りに横浜港へ。船の別れは感傷を誘うもの、と一時代前のイメージを抱いていた私は、船のむこうとこちらとで携帯電話で日常のお話をする光景に驚いた。もう船に入った人を「どこかしら」と目で捜す映画のようなシーンはないのだ。船上から「ここよ」と電話片手に手を振れば見送りの人も「ハイハイ いってらっしゃい」である。100日のクルーズといっても、インターネットは使えるし、ね、であった。帰宅後仕事を片付けて、水・木は先月に続いて四万温泉へ。冬から春へと移ろうこの季節を見逃すわけにはいかない。 日本は縦に長いことは子どもの頃から日本地図で知っていたけれど、今回それが浅い知識だったことに気付いた。少し山を登り下りすれば、ふもとでは満開の桜が、五分咲になり三分咲となり、ついにはかたいつぼみとなる。紙に書かれた平面の地図から単純に地名で気候を推測してはいけない。日本は縦にも高さにも広いのだった。 帰宅後またせっせと仕事をこなし、金曜の晩は千石の三百人劇場へ行った。学生の頃シェイクスピアを見に行った劇場は、今年いっぱいで閉館される。最後の年にまたお芝居を見られたことに感謝—。 今春は風の強い日が多く、東京では花見日和があまりなかった。月曜からはまた天気が崩れるらしい。このままでは淋しいので、日曜日の開店前、近所の公園になごりの花見へ行く。ハラハラ散りぎわの桜を満喫。店の横のプランターもいよいよ花盛りとなった。来週は地に足をつけて、園芸作業ウィークにするか。 4月3日 春の花壇は大ばんぶるまいだ。 ビオラやパンジーは花盛り。朝外に出ると、まず咲き終わった花の花柄摘みに追われる。ひとつずつ「おはよう」と声をかける。ムスカリも花弁を広げていて、香りをかがずにはいられない。すずらんの芽の色もきれい。そうして手もとのプランターばかりを見ていたら、路を通る通勤途中のご婦人の「まっさぉー」という声がきこえた。同僚らしい人に話しかけている。見上げると、今日は快晴、道路の上に拡がる空の色のなんときれいなこと。 いいもの見せてくれて、ありがとう。 と、見知らぬ人の背中に感謝。 2006年3月のユーコさん勝手におしゃべり |