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3月20日 ちょっと厚めの本を読むときは、いつも転校生になったみたいだ。 登場人物や地名になじみが無いので、何度もページを遡って確認したりする。すんなりと世界観が入ってこなくて、なかなか読み進まない。 それがある時、急に面白いと思えるようになる。ページをめくるスピードもそこから上がる。そのポイントの正体はわからないが、そこにたどりつくまで、「絶対、面白くなる」と信じて我慢するのだ。 そして、その数十ページか数百ページの我慢の先、本の世界にすっぽりはまった時に、えもいわれぬ満足感がやってくる。読み終わっても名残惜しくて、最後のページを閉じるのがためらわれる。 最初からすっと読みやすい本もある。つまずくことなく興味を継続させ読み終える。消化のいい食べ物と同じで、それなりに栄養にもなっているのだと思う。 でもね、たまには、ずっしり噛み応えのある、自分に最初の我慢を強いるような本に出会いたくなる。だから、書評欄や本屋は、必要なんだな。 3月17日 何年かぶりにいちごジャムをつくった。 最近はいちごの品種改良や農業技術の向上で、八百屋さんやスーパーの店先に並ぶいちごはどれも大粒で美しく、しかもおいしい。もったいなくてジャムにはできない。 それがたまたま先日、小粒不揃いのいちごが4パック一組で売られていた。その日はそのままおいしくいただき、翌日残ったいちごをジャムにした。 いちごのヘタをとっている間にガラス瓶を煮沸して、砂糖とレモン果汁を用意する。 砂糖をまとったいちごにレモン汁をかけコトコト煮れば台所中がいちごの香りになる。 子どもの頃、学校から帰ってきて玄関を開けた時、この匂いがすると、ふわぁと気分が上がった。一番好きな香りの思い出だ。 昨日一日降り続いた雨が今日はあがって日が差している。朝食にルビー色に輝くいちごジャムをのせたトーストで春を味わった。 その後、飼いカメを外に出すと、通りかかったお散歩中の保育園児たちの「わあーカメだ」「起きたんだぁ」という歓声が聞こえた。 カメの世話をしていた店主に、「あ、おじいさんだ」と声をかける子たちに、年かさの保育士さんが「やだぁ、おじさんって言って」と言っていたと髭が白くなった店主が笑って報告してくれた。 3月15日 「来る」とわかっているのに春は突然あらわれて目を驚かす。 街路では枯れ木に咲く花 小庭に浮上する花色の鮮やかさ (実際、街路樹は冬眠していただけで枯れてはいないし、小庭の花芽は自分で苗を植えたのに、すっかり忘れていただけだ。) 昨日、飼いカメの冬眠バケツの蓋を開けた。去年の紅葉の葉の下で微動だにしないカメを、泥の中から掘り起こす。水シャワーを浴びせると首を出し薄目を開けた。 冬眠から目覚めたカメは、日中しばらく日向ぼっこをしていたが、陽が陰ると店に入れてくれと乞う。 家に上がるとさっそく店主の昼寝用寝袋に入り込んで寝てしまった。寒い曇天の今朝はそのまま出てこない。 小庭にカメの居場所は作ったけれど、しばらくは天候待ちだ。 今日が肌寒くても、目の覚めるような純白の雪柳が、時の進行を教えてくれる。 3月8日 沈黙の花見。 3月の4日・5日と湯河原温泉へ行った。寒波で遅れていた梅も河津桜も見ごろとなって、イザ眼福旅のはずであったが、三たびの寒波で積雪予報となった。 山あいの宿へ電車で出かけた。温泉であたたまったものの、雪と北風でどこへも出られず、宿の窓と東海道線の車窓から、庭や山腹の花を静かに愛でた。 今日もまた、冷たい風が吹いている。朝、自転車で買い物に出ると、沿道で白モクレンや沈丁花が咲いていた。 目のはじに映し、自転車を止めることなく黙って通り過ぎる。曇った空の下では花色ははえない。 夕方から雨のち曇りの予報が出ている。来週こそ、日差しと青空が見えるかな。 今年はお雛さまも静かに退場した。
2月のユーコさん勝手におしゃべり |