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5月31日 気候の乱高下がとまらない。 今週半ば、群馬の老神温泉に泊り、金精峠を通って奥日光へと出かけた。計画時には、既に暑くなっている平地からの避暑だった。 出発時には思惑通りで、桐生が丘動物園で繁殖期に入り元気な動物たちを見て、峠道を登り、老神のいで湯に浸った。 新緑の山並みの真ん中に集落と温泉がある。優しい湯と地元の食材に癒される。 翌朝、毎日6:00-7:30にひらかれる朝市へ行く。去年ここで買ったひたし豆がとてもおいしかったのだ。試食を出し作り方を教えてくれた同じおじさんがお店を出していた。試食のラインナップの中に去年のひたし豆がなかった。聞くと、 「去年、天候が暑すぎて、出来なかったんだよ」 と言い、「今年はコレ」とミックス豆の袋を見せてくれた。ひたし豆は青大豆単品だが、今年のはいろんな豆で、その中に青大豆くんも入っていた。 「これは豆ごはんにすると、おいしいよ」 と作り方を教えてくれる。それを一袋と、あずきを一袋買う。あんこを自分で作ったことはないが、おじさんの試食がおいしかったのでトライすることにした。 おじさんは今年80歳。若いころは東京で料理人として働いていたそうだ。かくしゃくとしていて、同じ地元出身の奥様とご夫婦で農作業にいそしんでいる。子どもの頃、急流の川で泳いだ話や、大蛇祭の話に花が咲いた。 もう一件、去年と同じおばちゃん手造りのドレッシングを3本買った。畑でとれた野菜や木の実から何種類も作っていて、どれもおいしい。 その日関東地方は晴れで、北の山沿いだけ午後から雨の予報だった。 朝のうちに宿を出て、金精峠へ行く。車が山を登っていくと新緑から新芽が出たての情景にかわり、丸沼あたりで道沿いに残雪が見えるころには、白樺も丸裸となり、常緑樹とコントラストをつくっていた。 峠から湯の湖畔まで少し下がると、再び新緑とつつじの満開がむかえてくれる。 ただし、雨。予報より早く降り出した雨が湖の景色をしっぽりと濡らしている。 釣り人たちだけは元気に全身カッパで駐車場から車を降りてゆく。ハイキングはあきらめて、日光方面へおりることにする。 竜頭の滝まで行くと雨はまだ到達していなくて、輝くつつじが美しかった。国立「さかなと森の観察園」を一周する。色鮮やかにクリンソウが咲き初めていた。魚たちへエサやりを楽しんでいると、山から雨がおりてきた。 いろは坂を下っていくと雨はやみ、ふもとには雨雲の気配もなかった。ラジオの天気予報が、 「今日は一週間ぶりの快晴、五月晴れでした。明日からまた雲がかかって、天気は下り坂です」 と言う。 何とも皮肉な旅となった。そして、昨日今日の東京は3月並みの15度の気温と降り続く雨である。 夏日になったり早春になったり、めまぐるしい。こんな時思い浮かぶのは、旅で出会った一面田畑の光景である。どうか無事で、今年こそいい収穫をむかえますように。 おじさんの手書きのレシピをみながら、今朝、おいしいお豆ごはんを炊きました。 5月17日 季節をさかのぼる旅をする。 北上する高速道路にのって、埼玉を抜け、群馬に向かう。実り豊かな小麦畑と、田植えのはじまった田んぼの中を走る。 富岡で高速を降りて、榛名神社へ。峠を登ってゆくにつれ、準備中の田んぼが増え、田植えに向けて畦道の草刈りをする人が見える。 車を駐車場に止めて、榛名神社の山門から涼しげな川沿いの山道を登ってゆく。 その日東京は25度を超えて夏日になったが、榛名山はまだ春のよそおいで、本殿までの坂道も快適だった。矢立杉の立派さに心が躍る。樹齢600年、人も含めて、いろんな動物を、黙って見てきたのだろう。巨木に会うと、耳を近づけて話を聞いてみたくなる。 お参りをして、山から榛名湖に降りると、満開の八重桜が湖畔をいろどっていた。 伊香保温泉で一泊して、翌朝、前橋の敷島バラ園で春バラまつりの眼福を得た。ぐんまこどもの国へも足を延ばしてハイキングを楽しみ、群馬満喫の二日間を過ごした。 夕刻に帰宅後、パソコンをひらくと、現実が一気に押し寄せる。 ありがたいことに、二日を空けてもお客様との縁は途切れず、たくさんの本が出番を待っていた。 はい。また新たな気持ちで、一歩ずつ励みます。 翌朝、自転車で買い物に出ると、よそ様の庭でビワの実がもう色づきはじめていた。 ボーっと人のまつりを眺めているうち、自分の店の前にも、菖蒲まつりの提灯が飾られていた。5月も後半、菖蒲が咲きそろうと、早今年も折り返しなのだなあ。 5月12日 ある夕方、アスターの葉のてっぺんにテントウムシの幼虫が動かずにいるのを見た。 翌朝、淡いオレンジ色のできたてのさなぎになっていた。店の前に置いてあるプランターの上なので、通るたび目に入る。だんだん色が濃くなり、テントウムシの橙色と黒になっていく。観察が毎日の楽しみになった。 5月11日 自転車に乗って、堀切から浅草橋まで、店舗用品の買い物に行く。 堀切橋で荒川を渡り、汐入大橋から隅田川を下って隅田公園から街へ出る。ここから浅草橋までは、どこもお祭り気分だ。 5月初めから6月あたままで、毎週どこかの神社で例祭がある。ふだんでもにぎやかな浅草界隈に祭りのポスターが貼られ、レンタル着物のインバウンド観光客にまじって、本物のはっぴ姿の人々がゆきかっていた。 浅草橋は紅白マロニエまつり開催中だった。パレードの喧噪を抜け、いつもと変わらぬ店で買い物をして、いつものとんかつ屋さんでお昼を食べた。 帰り道は、スカイツリー方面へ出て、たばこと塩の博物館で、「浮世絵でめぐる隅田川の名所」展を観た。 変わったところと変わらぬところ。思ったより来館者も少なくて、おもしろくゆったり見られた。 人は、人の集まるところばかりに集まりたいものなのだろうか。 5月3日 ジャスミンが咲き揃いゴールデンウイークがやってきた。 ハニーサックルが咲き始めると、風薫る五月の到来だ。 今や春はあふれかえり、二か月前には春を探して歩いていた道は、初夏へと進みだしている。 雨の朝、上野の東京国立博物館へ、「蔦屋重三郎展」と「浮世絵現代展」を観にでかけた。 博物館の門を入ると、正面にあるシンボルツリーのユリノキに花が咲いていた。そのどっしりとした太い幹からは思いもよらない可憐な花だ。枝いっぱいに黄色と赤の混じった炎のような花が乗っていた。満開に立ち会えるのは何年かぶりで、この貴重な出会いにカメラを向けた。 展覧会は二会場とも充実の作品群と展示で、目も頭も足もフル回転だった。 すっかり興奮した心身は、甘味処みはし本店で癒す。店のウィンドウに「若桃のクリームあんみつ」の表示があって、疲れは一気に吹き飛んだ。この季節にしか出会えない特別な一品である。実は去年は食べそこなって、今年こそ時を外すまいと秘かに願っていたのだ。 若桃のクリームあんみつに白玉を追加して注文する。実によい一日だった。 シャキシャキの若桃、今年もう一回くらい、食べられるといいな。
4月のユーコさん勝手におしゃべり |