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11月17日 今日は、あたたかいけど風の強い日だった。 あたたかいといえば、カメがおとといの晩、また、たまごをうんだ。 2階のダイニングのはじに寝袋が置いてあり、夕食後など仮眠をとるのに重宝している。おとといの晩、「ちょっと横になろう」と寝袋を開くと、カメが入っていて、横にちょこんと白い奇麗なたまごがあった。 カメが入り込んでいたことと、たまごがあったこと、二重に驚いた。寒がりのカメは家の中でほとんど寝て過ごしているが、自分の寝床よりもっとあったかいところを見つけて喜んで入ったのだろう。でも、産卵だなんて…。しかも冬眠直前のこの時期に、今までとまったく違う場所で、である。 夏の産卵時は苦しそうに後ろ足の曲げ伸ばしをくり返し、破水して地面を濡らしながらとか、水槽の中で、たまごをうむ。なのにあの晩のたまごは濡れてもおらず、寝袋内もきれいなままだった。幻のようなホントのカメのたまごだった。 その話を、齢90になる叔母にしたら、「今ごろ咲く 桜みたいね」 と言う。そういえば、秋に染井吉野やつつじに時期外れの花が咲くことがある。今年のカメのたまごも、桜の狂い咲きみたいなものなのか、と納得した。 齢90というと、叔母と角野栄子さんは同世代なのだ。 あたたかいけど風の強かった今日、江戸川区にある角野栄子魔法の文学館へ行った。 自転車で荒川土手を海に向かってこぐ。向かい風だったが、目的地があり、入場時間予約もあるので、がんばった。 なぎさ公園に着き、駐輪場に自転車を止めると丘の上に白い文学館がある。「清純な白」と角野氏が言う建物に入ると中は一面「いちご色」に染まって角野栄子ワールドになっている。 対談やインタビュー映像の中で、角野氏が相対する人を「あなた」と呼びかけていた。 「あなた○○じゃない」「あなた○○したらいいわよ」 それが、叔母の口調と重なった。そういえば今、「あなた」という呼びかけをあまり聞かない。黒柳徹子さんも、対談では「あなた」と言っていた気がする。 戦争を越えてきたパワフル世代の意気を感じた。 文学館を出ると、風はいっそう強まり、落葉をとばして、旧江戸川にも白波がたっていた。ここから葛西臨海公園までは向かい風で、自転車は強く漕いでも歩くより遅いくらいしか進まない。そのつらさを乗り越えて、臨海公園から荒川に入ると、ここから店のある堀切までは追い風だ。 まるで無風空間を進んでいるようだが、実は風が背中を押しているのだ。動く歩道に乗っている気分で自転車を走らせた。 これが最後の小春日和だろう。 店に帰ると、気象予報士が、「明日から寒気が南下します」と告げていた。 11月11日 「カメが たまごうんでる!」 「え?」 夜、家の中で自分のふとんにくるまっていたカメが、ゴソゴソ出てきて、水道の方へ向かった。時々店主が水浴させてやる流しである。 いつものように桶にぬるま湯をためて浸けてやると、水を飲み落ち着いて沈んだ。 数時間後、水からあげようと流しに向かった店主が、 「カメが たまごうんでる!」 と叫んだ。 「え?」 最初は聞き間違いだと思った。 「イヤ、見ろよ、たまごだよ」 と促され、黒い水桶を覗くと、カメの白いたまごがひとつ、水底にあった。 この夏、いつもより難産ながら、カメはせっせとたまごを排出した。そして秋が来て、今は一日の大半を眠って過ごしている。 こんな季節に産卵なんて、初めてのことで驚いた。 人間は驚いたが、カメは平然として、トコトコ歩いて寝床へ向かった。 人もカメも長く生きていると、いろんなことがあるもんだな。 11月9日 飼いカメは、家の中で寝床に入ったまま、ほとんど出てこなくなった。そっと覗いてみても目をつぶっている。 お肌(甲羅)が乾燥してしまうのを心配して、たまに店主がぬるま湯につけてやると目を覚ます。タオルで拭いてもらうと、しばらく探検してまた自分で寝床へもぐりこむ。 本格的な爆睡はまだだが、もう外に出る元気はない。 今朝、カメのプールのあったところに、草花のプランターを並べ、 「カメは冬眠しました。また春になったら会いに来てね」 と書いたプレートを挿した。 今までカメにあいさつしていた近所の方が、「あら もう寝たの」と言っているのが聞こえる。 店主が外で作業をしていると、プレートをみて、「カメって冬眠するの!?」 とスマホを出してカメの冬眠について検索していく人もいたそうだ。 いろんな反応があり、あらためてカメの顔の広さに驚いた。私よりぜったいはるかに知り合いが多い。私以上、お地蔵さん以下、くらいかなと思う。 11月4日 季節が揺れ動いている。 秋の女神に後ろ髪はない、のか、まだ前髪さえ到来していないのか、わからない。 夏服もしまいきれず、衣替えも中途半端なまま、昨日木枯らし一号が吹いた。 小庭の植え替えは徐々に進んでいるが、秋冬花壇にはなりきらない。暑すぎて咲けなかった夏の花が、今になって元気に花開き、抜くには忍びないからだ。 朝晩は寒さを感じるようになり、飼いカメは家にこもっている時間が長くなった。 そろそろ冬眠用の落葉拾いをはじめる頃だが、紅葉は今年例年より遅いようだ。 先週鬼怒川温泉へ行ったけれど、山は色づき始めといったところだった。温泉に行く前に、倉ヶ崎SL花畑へ寄った。ダイヤは知らずに行ったが、ちょうど日光・鬼怒川間を走るSL大樹の通過時刻が近く、立派なカメラを担いだ人が続々とコスモスの中の小道を、線路の方へ進んでいった。 一面のコスモスの中に、コスモスと同じ背丈のヒマワリがポツポツとまじっている。 夏の間背高く咲き競ったヒマワリの種が落ち、芽を出した二世だ。鮮やかな黄色がピンクのコスモスの中でいいアクセントカラーになっていた。 今年は異常な暑さが続いたけれど、こんな暑さの効用もある。 その中を速度を落として走るSLは期待以上の迫力で、カメラマン以外はみんな手を振り、SLの中の人もみんなこちらに手を振って、花畑中に笑顔が咲いていた。
9月のユーコさん勝手におしゃべり |