ユーコさん勝手におしゃべり

5月31日
 曇天の日曜日、午前中堀切菖蒲園へ行った。駅から菖蒲園へ続く小路のあじさいが今年も立派な花をつけている。菖蒲の花は6分咲き、だがカメラ愛好家は大集合だった。大きなレンズをつけた一眼レフや小型のデジカメ、そしてケータイ、人を入れたり花だけだったりさまざまな写真をとっている。
 写真がこんなに一般に普及する前から人は旅をしてきた。最近も急増している花木を植えてする町おこしの祭りが成り立つのは、カメラ普及の力が大きい。旅に写真がなければ、観光地にそれほどたくさんの花はいらなかったろう。
 もしカメラがなかったら、と思ったのは、今日たまたま園内でスケッチする人を一人も見なかったからかもしれない。
 午後、書庫へ行く途中、駅前の空を飛ぶつばめの数がいつもより多い。「アレ」と思って巣を見たら、いつも並んでいる子つばめの頭がなかった。
 「飛べるようになったんだ!」
少しの間見ていると、親つばめが飛んできて巣に頭をつっこんでいる。まだ巣の中にはちっちゃい子がいるらしい。「子育てももう少しですね」とつばめに声をかけたくなった。
 用を済ませて帰店するとしばらくして雨が降ってきた。そしてみるまに恐ろしいほどの大雨になる。体も大きくなって飛べるようになった子どもたちともうすぐ飛ぶ子、それから両親、小さな巣の中にみんなひしめくように入っているのかしら、と考えるだにほほがゆるむ。
 5月の末、4日つづけて雨降りだ。明日は、晴れるといい。

5月27日
 もうすぐ菖蒲まつりとて、堀切菖蒲園の駅前に大きな立看板が建った。つばめの巣の真下になるので、どうしたかと、本の発送で郵便局へ行く時にのぞいてみた。すると、赤い立看板の上にちょこんと親つばめが乗って毛づくろいをしている。斜めに見上げると巣がある格好で、ちょうど巣の見張りにもいいらしい。巣からは子つばめの頭がちらちらのぞいている。都会のつばめの適応力の早いこと、案ずることもなし、だ。
 菖蒲はすでに4分咲き。6月早々には見ごろをむかえてしまう。最近の温暖化の影響で、各地の様々な花まつりは今後開催時期の見直しを迫られることになるのだろう。

5月25日
 コーヒーがおいしいとうれしい。15歳で自分用にサイフォンを買ってからずっと、サイフォンで淹れるコーヒーが一番好き。毎日の楽しみのひとつはコーヒーを淹れる時間だった。
 サイフォンの上ボールは時々壊れる。形もいろいろで、自分に使い易いもの扱いにくいものがあるので、壊れる前に買い置きを用意しておいたりした。ところがそのストックがない時に上ボールを割ってしまった。サイフォンは調理台の上でけっこう場所をとる。コーヒーを淹れる以外に使い道がない。ガラスなので割れると危ない。等の意見も周囲からあり、しばらくペーパードリップの生活をおくった。やかんを変えたり少々の工夫もした。
 でも、やっぱり…。
 注文したサイフォンが自宅にやってきた日、頭の中で
「好きなもの いちご コーヒー 花 美人  ふところ手して宇宙見物」 の寺田寅彦のことばがずっとリピートしていた。
 経済効率より精神安定。
 好きなものに接して触れて、適度に頭を使って、適当にねじをゆるめて生活してゆくのが、一番いい。

5月18日
 日がどんどん長くなってゆく。
 春の花壇が終盤になる。ビオラにうどんこ病が発生し、静かに春の花壇を侵しはじめた。まだ盛んに咲いてくれているのもあるが、2日に一鉢くらいのペースで、夏の花に入れ換えている。少しずつ花壇の風景が、春から夏になり、5月が終わる頃にはすっかり夏向きになるのだろう。
 昨日、今年2度目のいちごジャムをつくった。1か月程前の雨の日に、いちごが安く出ていたのでたくさん買って、大きな土鍋でジャムをつくった。その時実家の母にもおすそわけした。
 先日、「母の日に何か欲しいものある?」と電話したら、「何もないよ。」と言っていたけれど、後日、「いつでもいいから、またいちごジャムつくってよ。とてもおいしかった。お父さんもうまいって食べてたから、母の日と父の日両方、いちごジャムでいいよ」と電話があった。
 いちごの季節はもうすぐ終わりだ。それから毎日スーパーへ行くと、いちご売り場をのぞいた。昨日は雨、またしても雨の日に良いいちごと出会う。
 子どもの頃、母のつくるいちごジャムが大好きだった。家の中が甘い香りになることも、びんに入ったルビー色を眺めるのも好きだった。
 春のおわり、思い出と共に家にただよう甘い香りを楽しんだ。

5月8日
 五月雨だ。雨が降ったりやんだりの日が続いている。こんな時の楽しみは、近所の駅前のつばめの巣。
 普段はエサとりに忙しく、巣には不在のつばめ夫婦が、巣やその周辺で毛づくろいなどしている姿をみることができる。
 雨が上がると、私たちの目線の高さくらいの低いところをスーイと泳ぐように飛んでみせる。
 雨がちの日、遠出はできないけれど、身近にこんな楽しみがある。

5月5日
 ゴールデンウィークである。日本中どこへ行っても美しい季節だ。普段通り受注はするが、発送作業は特に急ぎのものだけなので、開店前に少し時間の余裕がある。そういう時は自転車だ。
 今朝は堀切菖蒲園をのぞきに行った。藤も牡丹も終わり何もないかと思ったら、緑の菖蒲田に一輪、紫の花があった。
 フライングの一番花だった。周りはまだ、つぼみもふくらんでいないのに、もうきれいに咲いていた。他に誰もいない菖蒲田に、さっそくちゃんとどこかの取材の人が来ていたのはご立派。報道関係者は休まないのだった。
 自転車で行く先々で、人様のお庭の薔薇が目に入る。ジャスミンに薔薇、初夏は香りと共にやってくる。

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