ユーコさん勝手におしゃべり

2月29日
 2月がゆく。
 寒さと強風の印象を残した2月だった。数日前、「これが最後の寒波になるでしょう」と天気予報が言ったとおり、昨日から暖かさがやってきた。
 空気の色までかわった気がするのは、お花屋さんの店頭やスーパーのディスプレイに桃の花が多くなったからかもしれない。
 2月の最終日、3月の風を感じて、プランターの雪がこいをはずした。今冬2回目の積雪の後、プラスチックの小さなフェンスとビニールで簡易につくった小さな風よけです。はずしてみると、ミニバラの赤い新芽がきれいでした。

2月23日
 数日前プランターにクロッカスのつぼみをみつけた。
「今年のさいしょは白のクロッカス、ゆっくりと春が来る」 とその時思った。思った翌日からクロッカスの魔法がかかったように日ざしが明るくなり気温が上がった。今日は15度にもなるらしい。今年はいつもより開花が遅れている梅もこれで一気にほころぶだろう。予報によると、開いたところで明日はまた急激に気候が戻り、東京の最高気温は8度だそうだ。こうして寒から暖へ、暖から寒へ揺れ動き、季節が少しずつ進んでいく。
 2月は短い。「あ、しまった」と思ううちに2月の最後の週がやってくる。年に一度しか会えないおひな様に今年もお出ましいただこう。
 食卓のテーブルに直径6センチのおひな様と薄紫のバコバの花を、今年もちょこんと飾る。

2月17日
 注文のあった本を店舗から書庫にとりに行く。日々繰り返されるルーティーンワークだ。
 でも今朝は新鮮だった。書庫へ行く途中の民家の玄関先の植木鉢から目の前を何かが飛び立った。「すずめかな。すずめより少し小さいな。」と思って見ると、鶯色だ、目の周りが白い。
 「メジロだ。」
 電線にとまったそれをよく見ようとしたが、またすぐ飛び立った。梅の盆栽にメジロ。風はこんなに冷たくても、もう確実に、春がやってくるのだなぁ。

『古本屋五十年』『「悪い仲間」考』などの表紙絵を描いた青木有花が2月24日まで埼玉県牛久のアートスペースある・るで、新作展示しています。機会がございましたら、お立ち寄りください。

2月9日
 今冬は寒い。
 先日、いつもよりちょっと遠くまで自転車で買い物に行った。その晩、肩から頭まで痛くて首が回らなくなってしまった。寒さで首をすくめていたのだろうか。
 去年が暖冬で楽だっただけに、今年の寒さはこたえる。無防備だった自分を反省して、今日はネックウォーマーをして仕事をした。
 各地で梅まつり開催の時期となった。今朝、車で浅草の隅田公園の横を通ったら梅まつりののぼりと梅の木々が見えた。しかし、天気予報通り午後からは雪が降ってきた。満開の梅の花にも今は雪が積もっていることだろう。
 この冬、寒いのは日本だけではないようで、先日書籍を送ったカナダのお客様からこんなメールをいただいた。
 「カナダの南部のKelowna という町に居ますが、例年は雪かきをする日は全部で四日くらいなのに、今年は三日に一回という異常さです。ここでも天気は狂ってきたようです。家の庭先の小川も氷が張り、カモがスケートをしています。カモは着水するときに水上スキーのように両足を前に出して水に入りますが、氷の上ではまさにスケート。悪い事に、滑ってとまらず、向こう岸の石にぶつかって目を白黒にしています。」
 目に見えるような情景で、ひととき遠いカナダに思いをはせました。

 寒中お見舞申し上げます。立春が過ぎたとはいえ、まだもうすこし、
「相構えて念仏怠りたまうな」
 です。(深沢七郎著『言わなければよかったのに日記』「銘木さがし」より、冬の京都を石原慎太郎と旅したとき、風邪をひかないようにと互いに心をいましめたときのことば)

2月3日
 初積雪だ。目が覚めると、東京の朝はまっ白だった。
 今冬、運の良い人しか見られない初雪や、記憶に残らない積雪(?)の日はあったけれど、今日は未明から降り積もっている。
 ぬかっていないところを選んで道を歩いていたら、学生時代の記憶が甦った。
 「寒いね」と愚痴ったら、雪国出身の先輩が、
 「東京に来た初めての冬、冬でも道いっぱいに歩けることにびっくりした。冬には歩道は雪でなくなっちゃうから、こーんな細いところを譲り合って歩くのが当たり前だった。まっすぐ歩ける、って、感動したね」
 と言った。その時渡っていた歩道橋が広く感じた。
 季節の記憶がある。思い出す人がいる。今はもう音信がなくても、心の中に住む人があることに感謝する。

2月1日
 「カラスが何か食べてるわよ」
 朝、店の外に新聞をとりに出たら、顔見知りのご婦人に声をかけられた。自転車を止めて指さす奥さんの目線の先を見上げると、店の2階の窓から下がっているハンギングプランターに大きなカラスが乗っていた。不安定なところで上手にバランスをとりながら何かをつついている。でもバコバの花が白く咲いているだけでそこには何もないように見える。実がなるわけでもない。
 「何かあるのかしら」「うーん何もないですねぇ」 と会話した後、
 「青虫!」と思いついた。「青虫でもいるんじゃないですかね」と口に出して言ってみた。
 「ああ、そうねぇ」 と奥さんも納得して、また自転車に乗って行った。
 まだ蝶々はとんでいないけれど、ヤシの実プランターに張りついたてんとう虫はこないだ見つけた。青虫の姿はまだ人には見えないけれど、カラスの目にはもう見つかる。
 寒い日が続いていても、春はゆっくりやってきているらしい。

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