いざ

ユーコさん勝手におしゃべり

10月29日
 冷たい雨がやってきて、ようやく夏の扉が閉められた。
 先週末、軽井沢へ行った。高原でさえ紅葉ははじまったばかりだ。一泊した翌朝、ホテルの窓を開けると、一晩で木々の色が濃くなっていた。
 旅の帰りに、ホームセンターでビオラの苗を買う。待っていた品種がようやく入荷していて、その鮮やかな色に心躍った。
 例年より1ヵ月遅れながら、小庭の植え替えを進め、「秋が来た」と思ったら、台風が来た。いまだ海水温が高い太平洋を北上し、秋雨前線を刺激するそうである。
 低気圧に弱い私は偏頭痛の薬のお世話になりつつ、まだ一部現役の夏の花と、秋の花の混じる花壇を眺めて、季節がゆくのを観察しよう。

10月24日
 小春日和というには気温が高すぎる10月下旬である。
朝起きた時に着た長袖とジーンズから、半袖シャツに夏用のジャンパースカートに着替えて、堀切菖蒲園へお散歩に行く。
 数日前からツツジが咲いている。4・5月の花だが気候に誘われてポツポツと数輪が花開いてしまった。今咲いた枝は来春、まわりの木々が盛りの時には仲間に入れないのかな、と思っていたら、ひらひらとアゲハ蝶が飛んできた。しばらくツツジのまわりを眺め、開いている一輪にとまる。蜜を吸い、満足して飛び立った。
 人間は気候が異変というけれど、その時々の気候を感知して行動する虫や花は、少数ながらも感知したもの同士で、うまいこと命をつないでいるようだ。
 いったん花期を終えたシモツケやユリも、ちょこちょこと花をつけて、蝶たちに栄養を供給していた。
 カレンダーを持たねば、「9月のような10月」とも思わないし、第一「カレンダー」と「時計」に支配されている生き物は人間だけなのだった。花壇に教えてもらった。

10月18日
 筆が進まぬ秋なのである。
 9月末にいったん涼風が吹いたものの、30度へとぶり返し、10月最初の一週間を席捲した。
 園芸店にビオラが入ったら書こうと思って、待てども待てども植え替え時が来なかった。夏服秋服総動員の10月である。
 夏日が続きながらも上空は秋空が広がり、空気が澄んできた。好天に誘われ、連日自転車に乗って荒川土手を走った。
 第一週目に土手の主役はヒガンバナからコスモスへ変わった。
 10月11日にテントウムシを見つけた。暑くて夏眠していたのが目覚めたのだ。それに呼応するように、園芸店にパンジー・ビオラが並びだし、小庭の一部が秋になった。半袖でもうっすら汗をかく日ざしのせいで、秋の実感はなかなか わかない。
 そして10月14日、荒川土手にゆりかもめを見た。
「だって冬鳥でしょ」と、ちょっとびっくりした。今期の初見である。自転車で葛西臨海公園まで走り、海辺でのんびりしての帰り道、荒川の河口と江戸川競艇場の中間地点だった。冬には群れで見る鳥だが、一羽だけ、土手際のポールの上に止まっていた。
 季節はいつの間にか進み、少しずつカレンダーに追いついてきた。
 いつもなら10月に入ると香りだすキンモクセイが、いっせいに開花し、遅ればせながら街中のあちこちで芳香を放ちだした。
 でも気温が安定してきた今、暑すぎて咲くのを止めていた小庭の夏の花たちが元気を取り戻し、次々開き始めた。夏から秋への植え替えは、再び休止中である。
 今が何月か、カレンダーを見ないとわからなくなるような10月である。 

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