ユーコさん勝手におしゃべり

7月31日
 「あれ? 秋?」
秋風を感じた自分を疑い、否定した。長いにも程がある梅雨もまだ明けていないのだ。
 梅雨というより雨季と呼びたい7月の、30日、曇天から涼やかな風が吹いた。
雨季の次は秋か、と思えば、そうじゃなく、あさってからいきなり猛暑が来るという。
 もしコロナ禍がなくても、今年がオリンピックでなくてよかった。
 31日の朝、雨の音で目が覚めた。 この7月、一日中雨の降らなかった日は、結局1日だけだった。

7月20日
 ミンミンゼミの初鳴きをきく。
 これといった自然のない駅前だが、店の裏手の地区センターに大きなケヤキの木が2本あり、毎年セミが羽化する。雨つづきでボーっとしているうちに、日付ばかりが過ぎていった7月の壁をぶち破るように、元気にセミが鳴いた。
 7月1日は雨だった。7月も6月と同じように雨で始まり、私の記憶する限り、7月に入って24時間雨の降らなかった日は、1日しかない。
 大手を振ってはどこへも出かけられない今年の夏休みシーズンに、天気までもが呼応している。
 駅舎のつばめは、7月に入ると巣からこぼれ落ちそうなほど成長した。ヒナの重みで、少しずつ巣は崩れていき、勇気のある子から飛び立った。さいごの子は、巣からこぼれ落ちた時、初めて飛んでみるのだろうな、と日々見上げていたが、7月14日には、カラになっていた。
 二度の子育てを無事終えたつばめが飛び去り、再び半壊になった巣を、駅前を通るたびに見る。早朝、針金ハンガーの止まり木でピチピチさえずりながら じゃれ合う元ヒナたちの姿に遭遇すると、とてもうれしい。

 7月のはじめのある日、私のカバンの底に、見覚えのない小さいネジがひとつあった。「よくわからないが 何か」だと思って、セロテープで鏡に貼り付けた。
 数週間たって、店主が自室で同じ極少皿ネジをひろった。すぐには何だかわからない。家中の眼鏡のヒンジやパソコンを探索した結果、いつも旅の供をしているデジカメのネジだと判明した。
 「とっておいて よかったねぇ」「こんなとこ気付かなかったわ」 と笑い合った。
 旅にはとんと行っていない。デジカメには家内の日常がおさまり、ネジは普段使いのカバンと家の中に落ちた。
 よかったような、さびしいような、コロナの年の7月である。

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