ユーコさん勝手におしゃべり

5月25日
 今月12日に堀切菖蒲園での一番花を咲かせた菖蒲は、6月の菖蒲まつりに向けて、着々と花数を増やしている。初々しい花姿を撮ろうというカメラマンの数も日に日に増えてきた。
 今日、職員さんたちは、菖蒲に品種名の名札を立てていた。株元に付けられた番号を見て、名札と付け合せる。菖蒲田はぬかっていて、札は無数にある。たいへんな作業だ。
 名前がわかると急に身近に感じられるのは、人も花も同じである。公園の花木に名札がついていて、名前がわかるととてもうれしい。でもそれには手間がかかる。
 その為の地道な作業を見ることができて、よい日だった。

5月22日
 「こんなに天気のよい休日は、年に何回あるかしら」
 絵に描いたような五月晴れの青い空と白い雲だ。店主とバイクに二人乗りして、千葉へと出かけた。
 緑の濃い山あいを通る千葉外房有料道路を誉田インターで出て、長生郡のアリランラーメンをいただく。峠を越えるスタミナ食といういわれのラーメンで、なるほど店舗は峠の中の古民家だった。農村の広い地面に吹く風が気持ちよい。独特の角張った麺も美味だった。
 そこから各地域の民俗資料館を巡りながら、外房の海まで下っていった。
 農家の井戸や小さな溜池の脇で鮮やかな黄色の菖蒲が咲いていた。作りこまれた花菖蒲もみごとだけれど、たくましく自生した野菖蒲も魅力的だ。
 庭先のビワの実の色づきに季節の進みを感じる。
 外房の岩場に砕ける波を飽かずに眺め、再びバイクでどこまでも続く田園風景をたどって帰宅した。
 夜、外に出ると、きれいな半月が出ていた。終始好天の一日だった。

5月15日
 花壇の植え替えをした。長く春を保ったビオラにお礼を告げて、夏をいろどるサフィニアに入れかえる。伸びすぎたジャスミンの枝を切り戻して、壁面の主役をトケイソウやノウゼンカズラに譲る。
 枝切りの間にてんとう虫の幼虫を何匹か見かけた。去年、埼玉の彩湖から連れて来て小庭に放した数匹が、居ついて繁殖してくれたらしい。うれしくて、炎天下の作業の疲れも吹き飛んだ。
 てんとう虫のおかげで今年はアブラムシの被害がほとんどなく、五月半ばまでビオラを楽しむことができた。
 今年も先週、彩湖で元気なてんとう虫を捕獲して小庭に放した。普段 姿を見かけることはないけれど、葉っぱのどこかに居てくれると思うと頼もしい。
 そして夜、実家の父に電話をすると、
 「かぶれちゃったから、塗り薬を買ってほしい」 とのこと。
 この時期、椿の葉にはチャドクガの幼虫がつき易く、父はそれにかぶれるのだ。
 「次行く時、枝を切るから、(窓辺に椿の木のある)台所は、大きく窓を開けないでね。」
 と応えた。
 禍福はあざなえる縄の如し
 虫の功罪
 一日の内に、虫に感謝して、虫で困った。何につけ、いいだけのことも、悪いだけのものもない、と思う薫風の一日だった。

5月8日
 「春の次は夏だと思っていたら、春の次は冬だったよ。」
ずい分前に聞いた自転車通学の高校生のことばを思い出す。
 咲き急いだ花の進行にブレーキをかける寒い雨が降っている。気温は昨日より10度も低い。
 順調に進んだ季節もこうして戻ることがある。焦るとも焦らずとも、いつの間にか帳尻は合って、四季の順は狂うことなく一年は過ぎてゆく。
 こんな日は、立ち止まった季節と一緒に、自分も立ち止まって、ゆっくりお茶でも淹れようか。

5月5日
 五月の声を聞くか聞かぬうちに、薔薇はいっせいに咲き出し、ゴールデンウィーク前半に早咲きは満開になった。街を歩いているとフゥっと甘い香りがする。
 薔薇は目に鼻に美しい。
 四月中に夏日が何度もやって来て、五月の花々は五月になるやいなや咲き急ぎ、咲き終わる。これからの長い五月を、どうやって過ごすのか。
 四月の桜も、四月に入る頃には花吹雪になっていた。
 「花よ、そんなに急いでどこへゆく」 と問いかけたいような、三月後半からの陽気である。
 堀切菖蒲園駅から堀切菖蒲園へ行く遊歩道で、色づき始めた紫陽花の最初の一株を見た。ほかの株はまだ硬くて小さいつぼみだが、さきがけは やってきている。
 改装したばかりの菖蒲園の菖蒲はまだつぼみも見られなかった。なぜかほっとして、
 「ゆっくり育っておくれ」 と、いつになく早く往く季節に、いつにないことばをかけてやる。

4月のユーコさん勝手におしゃべり
それ以前の「おしゃべり」