ユーコさん勝手におしゃべり |
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4月15日 東京でも連日余震があり、時にケータイの地震警報音が鳴る。 今日、書庫に本をとりに行った時のこと、例の「ヴィーン」という音が聞こえ、「地震か」と身構えた。音のする方を見ると、自転車にまたがったまま、おじいさんが道端で鼻をかんでいた。「ヴィーン」とまた音がした。 笑った。揺れることにも警報音にも大分慣れたと思っていた自分を笑った。 店に戻って店主に話すと、店主も声をたてて笑ったので、これは笑ってもいい話なんだなと妙に安心して、あの音を思い出し、またおかしくなった。 4月14日 今、私の鼻の頭には、二つの小さい傷がある。さわるとちょっと痛い。 傷ができたのは深夜のふとんの中だ。寝る前はいつも本を読む。あるいは、読む意気込みでいる。すぐ眠くなってしまうのは分かっているのだが、眠るまでの時間ギリギリまでは自分のものだ。 その晩はハードカバーの本を両手に持ってあおむけになり、読み始めた。そして睡魔がやってきて…、「イテッ」と目が覚めた。本の角が当たったらしく鼻は痛かったが、あまりに眠かったので、そのまま眼鏡をはずして栞をはさんで寝た。 翌朝、鏡を見たらスリ傷があった。 そして夕べ、またしてもあれからほとんどページの進まぬ同じ本をもって、同じことをやらかした。 かくして小さな傷は二つとなった。 最近朝が早いので、夜は眠いのだ。何たって、桜が咲いているのだもの。そしてすぐ散ってしまう。 昨日は水元公園、今日は砧公園へ行った。明日は地元の小菅東公園へ行くつもりだ。 砧公園の桜は今年もみごとだった。シートをひろげ、パパ・ママとお弁当を食べていた2歳くらいの女の子が、 「さくら とんでゆ」 と言う。 3つくらいの子が声を出して笑いながら、舞い散る花びらを追いかけていく。どれだけどこまで追ってもとまらない。 私も、近くのスーパーで買ったお弁当をひろげた。お弁当の上にひらりと落ちる花びらも、いっしょにいただいた。 春はおいしい。 今年の春は格別だ。記憶に残る春になる。先日皇居のお堀の桜を見に行った時は、国立近代美術館の岡本太郎展を観た。今日の砧公園は、世田谷美術館の白洲正子展が目的だった。どちらの展覧会も、通常より観覧者が少なく、皆、静かで熱心だった。 公園もほどよい人手で、何よりゴミの散乱がない。飲食した後のゴミは各自で持ち帰っている。 自己責任で自制している。清謐な春だ。 姿はどうあれ、来年も、春が来るといい。 4月10日 桜が満開だ。電気をつけての夜桜宴会は自粛ムードだが、天気の良い日曜日、家族・親戚や友達グループでのお花見は行われている。うちの店のとなりはお弁当屋さんなので、昼前はにぎわっていた。店横でプランターの手入れをしていると、そのお客さんたちの中の小さな女の子ともっと幼い男の子の会話が耳に入った。 女の子はお小遣いをもらっているらしく、男の子にちょっと誇らしげにそれを教えている。 「50円。1日50円よ。」 と言うが、男の子にはよくわからない。そこで、 「『イチ、ニイ、サン、シー、ゴー、ロク、シチ、ハチ、クー、ジュー』っていうでしょ。あの10よ。1のとなりに0があるやつよ。あの1を5ととりかえるの。それが50よ。 10円5こよ。」 男の子は納得して、感心していた。女の子は「0があるほど偉いのよ」というようなことも言った。 男の子は1から10まで数えられるようになっていたが、それはお題目や音楽のようなもので、実際の数と音は結びついていなかった。少し前までそうだった女の子にはそれがわかったのだ。そして音と数を上手に結びつけた。 大人には思いつかないダイナミックな説明だ。小さな子どもが、自分より少し年上の子どものあとをついて遊びたがるわけを、みせてもらった。 4月6日 飼い亀を冬眠用の棚から出した。 今年も元気に目覚めてくれてよかった。冬眠用に土や枯葉を入れた水槽を降ろすときはいつもドキドキする。亀本体も水槽も洗って、いつもの場所に設置してやると、さっそく首を伸ばしてひなたぼっこをはじめた。 日ざしがあたたかくなり、朝晩の冷え込みもやわらいだ。桜も咲きそろって、来るやら来ないやら長く逡巡した今春が、やっと到来した。 今日、3月9日に本を郵送した仙台のお客様から振替入金があった。本がキチンと届いていたこと、そして何より、ご本人が無事だったことがうれしかった。振替用紙が、花が咲いたように輝いて見えた。 4月4日 "今 私にできることは何か" この問いが、東京電力管内にいるほとんど全ての人に問われている。 何をしていても、頭をもたげ、悶々とした半月を過ごした。 そして決めた。旅だ。今まで、さまざまな季節を通じて、北関東・南東北には、恩恵を受けてきた。うつろう自然を見て、美味しい野菜や海の幸、川の幸をいただいた。そば、うどん、ラーメン、みんな楽しみだった。 しかし、当たり前のように使っていた電気までお世話になっていたとは、知らずにいた。 今、被災地となってしまった地域には出かけるすべもないが、地震はあの広い大地の全てを奪ってしまったわけではない。被災地として名が上る同じ県内、同じ市内でも、大きな被害がなく営業している観光地やお店の方が多い。 震災の後、店主と「同じ商売人として、お客さんが来ないほど淋しく、心細いことはないだろう」と話した。募金ではなく、その同じ財布をもって、出かけることにした。一台のバイクに二人で乗り、先週は栃木・足利へ。両崖山に梅は咲き、花模様は昨年と変わりなかったが、高速道路のサービスエリアに観光用の観光バスが一台もない光景を、初めて見た。 今週は、茨城・古河に桃を観に行こうと思う。恒例の桃まつりはもちろん開かれていないが、桃は例年と変わらず咲いている。 今回は、バイクの後ろに荷物を入れられるボックスを積み、道の駅や直売所で、よりたくさんの買い物をしようと意気込んでいる。 今月、群馬への温泉旅行も決めた。リュックをしょって、よし、行くぞ。 3月のユーコさん勝手におしゃべり |