ユーコさん勝手におしゃべり

3月25日
 とてもかわいらしい落し物を見た。
 今朝、自転車で買い物に出た帰り、路地の電信柱の根元に、白いビニール袋がひとつあった。さいしょはゴミかと思ったが、大きな紙が貼ってあり、マジック書きの大きな字で
 「おとしもの  4年1組 ○○○○」
と書いてあった。学年末のこの時期、小学生は持ちものが多い。今までの提出作品やら文房具類を、せっせと持ち帰っている。
 帰り道、ちょっと道端に荷物を置いてお友だちと遊んじゃったんだろうなあ。そして忘れて帰っちゃったんだろう。
 学年と名前だけあって住所や電話は書いていないそれを、どこかのおじさんかおばさんが、まとめてビニールに入れてわかり易く置いといた。
 ちょっと恥ずかしいけど、ご近所のこと、きっと持ち主に返るだろう。
 行き交う人で慌ただしい街角で、前後のことを想像して思わず頬がゆるんだ。

3月20日
 昨日宅配便で、先月注文した春植えの花苗がやってきた。
もともと3月19日が配達予定日だったが、今回の地震で花農家も被害を受けているところがあろうと案じていた。
 予定日たがわずやってきたことに、罪の意識に似たとまどいさえ感じた。
 しかし来たものはいとおしく、さっそく今朝園芸作業をする。しゃがんで土をいじっていると、何人もに声をかけられた。
 「自分ではやらないけど、ここを楽しみにしているのよ。」
と、年配のご婦人が言う。
 「ありがとうございます」と応えて、次の季節もがんばろうとこちらの方が力をもらった。
 土をいじることは、未来を信じることだから。

3月19日
 お彼岸がやってきて、彼岸桜がよく咲いている。
 今日は朝から気候もよいので、自転車で堀切橋を渡って、南千住までおそばを食べに出た。近くの素盞雄(すさのお)神社は桃まつりとて、おひな様がずらりと並んでいる。咲き初めた桃に心がなごむ。
 書庫の点検、整頓が終わって、昨日から店も開けている。震災後は気分が落ち着かず、注文の数は格段に少ないのに、伝票のつまらない書き間違いをして書き直しをすることがままあった。
 昨晩お客様から「日曜に本を買いに行きます」と電話があった。必要とされているということを身にしみてありがたく思った。
 不自由な暮らしをしている方々のことを思いつつ、せいいっぱいの日常を送れることに感謝する。当地葛飾区は今のところ停電はありませんが、節電協力のため当分、店舗はいつもより早めに閉店いたします。
 今後ともご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

3月17日
 もう一週間、まだ一週間
 時は遅々として進まず、時はビュンビュン過ぎる。
 毎日余震があり、頭の中は始終揺れている
 毎日少しずつ仕事をして、ほとんどを待機している。
       でも、何を待機しているのか わからない。

3月15日
 このたびの地震で被災された方、関係者の方々に心よりお見舞い申し上げます。
  当方に大きな被害はありませんが、店舗での販売は、鉄道や電力の運行が安定するまで休止いたします。
 書籍の受注・発送などの業務は通常通り行います。郵便・宅配便の不通な地域からのご注文はお取り置きとし、開通後に個別にご連絡いたします。

 11日の地震発生時、私は近所の銀行にいました。ATM操作中に揺れ出し、どんどん大きくなるので、行員の方の「みなさん、外へ出てください」という指示に従って表へ出ました。立っていられない揺れで出入り口のスロープの手すりに腰掛けておさまるのを待ちました。見上げるとカラスがスーっと飛んでいて、「鳥には関係ないんだなぁ」と、考えていました。まわりの店舗から次々と人が不安な表情で出てきます。飲食店が多いのですが、3時前という時間帯が幸いし、パニックはありませんでした。
 船に乗っているような横揺れがおさまり、店に帰ると、一部の本や額の落下で、街より店舗内の方がたいへんでした。たまたまお客様がいなくてよかったです。
 今日も余震があり落ち着きませんが、なるべく平常心で生活していかねばと思います。店の暖房用の灯油を買いに行ってみましたが、どこも売り切れでした。騒いでも仕方なし、節約節電しながら、ゆっくり本を友として暮らします。

 灯油は売り切れでしたが、街路のモクレンは咲きだしていました。モクレンの木にひよどりがうれしそうにとまっています。店の横の花壇も色とりどりに春を告げています。

 とりあえず、青木書店、元気です。

3月11日
 2月の最後の日に、今年の最初のいちごジャムをつくった。まだスーパーの店頭に並ぶいちごはお行儀のよい粒ぞろいたちばかりだが、その日一日だけ、規格外の不揃いいちごがあったのだ。カゴに4パック入れてニコニコとレジに並ぶ。
 いちごに砂糖をのせレモン果汁をふりかけて、しばらく置くとそれだけで甘いにおいがする。
 あとはコトコト煮るだけ。
 大きいビンや小さいビンに詰めて、気の置けぬ人にあげる。
 翌日からは、冷蔵庫にいちごジャムがある、というだけで幸せになる。
 何のラベルもないガラスのビンにルビー色の半液体が詰まっている。パンやヨーグルトにのせて楽しんだ。
 残りわずかとなったイチゴジャム…。
 名残おしいなぁ、次いつ会えるかなぁ。雪の多かった今冬、本格的な春の来るのが待ち遠しい。

3月10日
 頭痛で一日寝てしまう。
 以前は月に1・2度ひどい偏頭痛があり、痛み止めを飲んで部屋を暗くして丸くなって小動物のように寝るしかなかったのだが、最近はよい薬ができて寝込まなくなった。予防薬もあり、偏頭痛自体減った。のだが、たまにはこんな日もあるのだ。
 偏頭痛は私の場合、気圧の変化に呼応している。急に気圧が下がるとき、頭の一点が痛くなる。片方の眼の奥が痛くて開けていられない時もある。そして去る。治ればケロリとしたものだ。
 今日一日をほとんどふとんの中で過ごし、思い出した。学生の時書いていた日記(のようなもの)の題名が「お天気ノート」あるいは「お天気の音」だったことを。その頃偏頭痛の兆しはまだなかった。お天気のように気分のかわる自分をからかう気持ちでノートにつけた題だったが、その後お天気に体調が左右されることになるとは…。
 こうして寝ていると、いろんなことを考えたり思い出したりする。眠ってもいろんな夢を見る。
 一日をフイにしてしまったと考えずに、様々思い出す機会を得たと前向きに置き換えよう。思い出すことが思い出たちの供養になるだろう。

2月のユーコさん勝手におしゃべり
それ以前の「おしゃべり」