ユーコさん勝手におしゃべり |
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4月24日 店のテレビはニュースを流していた。国会議員は皆立ち上がり、新党結成とか新グループ作成とかいっている。店主が 「みんなが立ち上がっちゃったら、誰が座ってんの? 立ち上がってばかりいないで、誰かまとめりゃいいのに」 とつぶやいた。学級崩壊の小学校の教室を見ているような物言いに、思わず笑ってしまった。 4月20日 街路は染井吉野と菜の花の組合せから、八重桜とつつじの組合せにかわった。花ミズキも咲き初めた。それなのにまだ寒い。先週末には雪まで降った。異例の4月だ。 先日、ターミナル駅で薄着で大きなカートをひいた外国人旅行者数人とすれ違った。旅行用ガイドブックには、例年の気温や気候が書いてある。その通り街には花が咲いていて、ブティックの店先に売っているのは軽快な春ものばかりなのに、肌寒く道ゆく人は冬の黒いコートを着込んでいる。困惑するだろうなと思いめぐらした。 アイスランドの火山の爆発の影響で帰国できない人や出国できない人も多くいるらしい。 数十年前まで、海外へ行くのは波濤万里、命がけのことだった。現在では誰でも気軽に出かけられるようになったけれど、自然がちょっと通常外に機能しただけで、人はこんなにアタフタしてしまう。覚悟なくエネルギーを使いすぎていませんかという何かの警告のようだと言ったら、うがち過ぎだろうか。 4月12日 おととい店舗を閉めて店主と外へ出た。堀切菖蒲園の駅前の信号のところで、店主がしきりに上を向いている。「え、まだでしょう」と言いながら近くへ行くと、「今、ひらりと黒いのがみえた」という。駅のガード下の去年つばめの巣があったところを見上げると、 「いた!!」 くろい頭と細長い尾がみえた。今年は寒いと思っていたが、日は着実に伸び、七時に店を閉めてもまだ少し明るい。今巣に戻ったところなのだろう。 何だかとてもうれしくなって、「いたよ、今年も来たんだね、どこから来たんだろうね…」 と急に饒舌になった。 そして今日、朝から冷たい雨が降っている。旅を終えて堀切に来たばかりのつばめ、冬眠から出てきたうちの亀、どちらもはじめての雨の一日を、どうむかえているのだろう。 入学式を終えた小学一年生もはじめての雨の登下校になる。それまでは保護者と一緒に行動していた小さな子が、一人で傘をさしてゆき、一人で帰ってくる。 うちの店舗は駅のそばにあり、私の仕事机は道路側なので、行楽帰りの家族連れの小さな子が、疲れてだっこをせがんだり、眠くてだだをこねて泣いているのを時々みかける。おいていかれて一人でじだんだ踏んでいる子もいる。親御さんは大変だろうけれど、客観的には、ほほえましい可愛らしい光景だ。 そんな子たちが皆が皆、一人で傘をさして、寒さにも暑さにもめげずに自分の街をゆくようになるのだ。 成長がかたちとなってみられる春の力だ。 4月10日 気持ちよく晴れた朝だ。 桜の花びらでそまった街路や、公園の草の上ですずめの群れがしきりに何かついばんでいる。すずめの子は大半がさいしょの冬を越せずに淘汰されるという。ひと冬を越す知恵と体力のあるものだけが長寿を許される。春の陽だまりで無垢な風体をみせているつわもの達よ。 先日、飼い亀を日蔭の冬眠用水槽から出して洗った。日なたで手足を伸ばし気持ちよさそうに泳いだ。大人の飼い亀に天敵はいないので、冬眠から覚めさえすれば晩秋まであんのんな生活がおくれる。 春を迎えた喜びが、ことばを発さない者たちの全身からあふれて見える。 4月7日 天候不順なのだ。暦だけは順調に進んでいて、日は長くなり季節の花は咲くけれど、寒さがいつまでも抜けない。週に何度も冷たい雨の降る天候不順の春なのだ。 桜は満開になった。花壇では色とりどりのビオラが咲いている。チューリップのつぼみも色づいた。そして何よりムスカリが満開だ。足元のあちこちで青い花を咲かせている。こんなところにも埋めたかしらと自分の仕業におどろく。年々少しずつ数を増やして、青い春を告げてくれる。 しかし、今年は何だかさびしい。第一、満開なのに忙しくないのだ。雨の多いせいで、水やりに追われることがない。気温が低く花が長くもつので、花柄摘みに追われない。 満開なのに忙しくないなんて!! 天候不順のいじわるだ。 「忙しいは心を亡くす」というけれど、花に振り回されて蜜蜂のように飛び回る楽しさを思えば、ちゃちな「心」なんていらない。「忙殺の喜び」だ。 そうこうするうちに桜はハラハラ降りだした。買い物に出るとふわりと花びらが飛んでくる。髪についたか服についてきたか、家の中でも花びらをみつける。 そして今日も、昼から雨が降りだした。道も公園も雨に濡れた桜の花びらでいっぱいになるだろう。10度に満たない外気温の中で、今年の春がゆく。 3月のユーコさん勝手におしゃべり |