ユーコさん勝手におしゃべり

3月23日
 なぜ春が好きかというと、それはやっぱり「色」だな。
 いつも通る道沿いに日々色が増えていく。
「あれこんなところに花桃が」「あら立派なモクレンだこと。」
 自転車に乗るたびに驚きがあり、ついキョロキョロしてしまう。一年巡るうちにたいていどこに何があったかは忘れてしまうので、毎年同じ感動がある。
 生花でなくても、この思いは味わえる。
 今日お昼に春キャベツとウインナとアスパラのパスタをいただいた。
「春だねえ、春っぽい」
 お皿の中に咲いた春の色、とてもおいしかった。

3月21日
 突風だ。
 深夜、風の轟音がする。障子をあけて窓越しに外を見ると、木という木が皆倒れまいと風に抗っていた。
 風の音に、ものが飛ぶ音や、たまに人の叫声が混ざって聞こえてくる。そのうち雨も降り出した。明日はどうなるのだろうと不安になる。昼間のニュースで、ものが飛んできたり野焼の炎にまかれたりと、各地で強風による死者もでたと言っていた。大陸から黄砂も飛んでくるらしい。
 朝方まで寝つけず、目が覚めたら日は高く昇っていた。晴天だ。おそるおそる障子をあけると、木は何もなかったようにスラリと立っている。
 身支度をして外に出る。看板の破片やら、薄ペラなベニヤ板片やら枯枝枯葉が道に散らばっていて、夕べの風の仕業を教えている。けれど、ひらひらとした花びらをもった草花たちは、意外にも元気に花を保ち続けている。
 自転車で買い物に出ると、まだつぼみの桜の並木に最初の一輪が咲いているのを見つけた。こんな風の日に咲くなんて勇気ある花だ。
 カタイものは割れるけれど柔らかいものは臨機応変性が高い。
 根をはってしたたかに生きるものに脱帽。

3月14日
 花が咲きだした。あちこちでさまざまに。
 地面を見ても天を仰いでも、若芽や花が目に入る。
 「これはオオイヌノフグリ」「これはこぶし」「これは桃」
丸裸と思っていた柳の枝にも芽が出ていた。名前を呼びながら自転車に乗っていたら、自分の周りに知り合いが戻ってきてくれたような、にぎやかな気持ちになった。
 家に帰って、そろそろかなと冬眠用水槽の亀を覗いてみたが、まだ目を閉じて眠っていた。

3月11日
 強風である。明日こそ、明日から、と気を持たせつつ、なかなか暖かくならない。おとといの雪のあと、昨日は一変して晴天となる予報だったが、結果は曇天だった。昼過ぎパラパラと雨まで降ってきて、たまたま来ていたお客さまに傘を貸した。
 今日その方が強風の中、傘を返しに来られた。
 「三寒四温というけれどもねぇ」
 「これじゃあ三寒四寒ですね」
 とことばを交わした。気温は低いけれど、掛け合いがうまくいって空気があったかくなった。

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