ユーコさん勝手におしゃべり |
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12月19日 東京国立近代美術館へ「ハニワと土偶の近代」展を観に行く予定だった日の朝、窓を開けると雪が舞っていた。パソコンのお天気サイトで確認すると「雪のち晴れ」となっている。あたたかく着込んで出かけることにした。 出がけには曇っていた空も電車を乗り継ぎ皇居前につく頃には、雪はまぼろしだったのかと思うほど晴れていた。 「ハニワと土偶の近代」は、古代の実物展示ではなく、近代の報じられ方や扱いに重点があり、あらためて「紙の力」を感じるものだった。 19世紀後半の雑誌には、今では失われた遺物も詳しく載っている。すでに手に取ることのできないものも、実際その目で見た人が、写生し計測した時の、伝えようという熱量が紙面から伝わってくる。 最も印象深いのは、1880年代蓑虫山人の絵画 《陸奥全国古陶之図》だった。 土器や土偶が果物や花と共に描かれ、その絵の中には生きて生活している人の息吹があった。 地方へ出かけるとその地の民俗資料館や博物館へ行き展示を見るが、歴史としてみるだけで、それを使う人と自分との間につながりを感じることはなかった。絵によって古代の人と自分との距離がぐっと近づいた。 紙の資料の中には、今では失われた建築物も様々な物品も残される。 日々古い本に囲まれ、いつ果てるともない作業をなりわいとしている。でも、手入れさえよければ本たちは、私より長生きをして、いつか誰かの役に立つ(はずだ)。 私に気付きを与えてくれるよい展示だった。 雪のち晴れ、展覧会の後はなんだか心が軽くなった。 12月17日 ぐんぐんと冬が迫ってきて、とうとう本当の冬が来た。 第一弾は先週末、はじめの寒気がおりてきた。7日の夕方、飼いカメを室外に出し、泥水をつくった冬眠用のポリバケツに移した。上から各地で集めた落ち葉のお布団をたっぷりかけてやる。 春まで深い眠りにつくカメは、これまで30年生きていても、これからも一生真冬を知らない。 翌日、店で店主のGパンをふと見ると、テントウムシのの幼虫がついていた。寒くなりすっかりアブラムシもいなくて、すがる思いで家の中に入ってきたのか。そっと手のひらに乗せて、小庭に出した。ゆっくり冬眠して、春にまた会おうね。 その翌朝、外に出ると、地面にこのところ見かけなくなっていたバッタがいた。もう動くことのかなわなくなったメスバッタを、彼女のお気に入りだったハンギングプランターの根本へのせた。また来年、あなたにそっくりなあなたの子どもに会います。 第二弾の強烈寒気がやってきたのは、その一週間後だった。日本海側に連日降雪のニュースが続き、晴天の太平洋側にも冷たい北風が吹き付けるようになった。 15日の朝、堀切菖蒲園に行くと、頭上から 「チューイ チューイ」 と高い声がする。バタバタと羽音がする方を見ると、メジロの群れが木々の間を飛び交っていた。 冬の散策は、鳥との出会いである。 16日には自転車に乗って旧中川を走った。釣り人のそばにはアオサギとコサギがいて、300mくらい離れたところにいる二人の間を巡回している。小型犬が通りかかってサギが飛び去る。 サギが離れたとたんに一人に釣果があり、釣り人がきょろりと見渡すがサギは見えず、仕方ないな、という風にバケツに魚を入れた。 川べりの杭にはユリカモメたちがとまっている。たまにハトの群れにまじってハトのペースで土手を歩くものもいる。 朝の冷え込みも強まった今朝は、車で都立水元公園へ行った。メタセコイアのオレンジ色の森を目指して歩く。遠くからでも、オレンジ色が目に映える。森の地面はメタセコイアの針葉の落ち葉でフワフワだ。 ここでも川岸に釣り人の釣果を待つアオサギがいた。でもこちらは即食いではなく後払いのようだ。おじさんの脇の小型水槽にはタナゴが何匹もいる。パッと釣れても物欲しそうにせず、おじさんを目の端に入れながら、熱心に羽づくろいをしている。きっとおじさんの帰りにまとめてもらうんだろうな。 公園内で、今年初めて霜柱を踏んだ。足元のザクザクという音が、 「ああ、冬が来た」 と教えてくれた。 12月3日 12月に入って、一気に秋の景色が拡がってきた。 イチョウは黄色く燃え、もみじは紅い。桜は既に葉を落としたものと、天に地に、はらりはらりと落ちてゆくものがある。 日本の四季から春と秋がなくなり、夏と冬の二季になるという説をよく聞くが、「秋」はここに確かにあった。ただ一ヵ月も後ろ倒しで、冬にくい込んでいる。 今年報道でさえ目にしなかったお酉様が、三の酉まで終わっている。師走感のない師走である。 今朝、店主と二人で上野へ出かけた。京成電車を日暮里駅で降り、晩秋の色をたたえた谷中墓地を通って、店主は東京国立博物館のはにわ展へ、私は国際子ども図書館の国際アンデルセン賞展へ行く。お互いに展示を見終えて、待ち合わせ、上野公園を歩く。 上野公園の入り口にはクリスマスマーケットがたっていた。今日も上着のいらない暖かさで、強い日ざしの下の大きなクリスマスツリーは、気の早いショッピングモールのディスプレイにしか見えない。12月の予告編のような12月だ。 上野へ出たら定番の、みはし本店へ。期間限定「クリスマスあんみつ」があり、あんみつにいちごと白玉、抹茶アイス、ソフトクリームが配色良くのっている。器の中のミニクリスマスをおいしくいただいた。 帰り道、不忍池へ寄り、きれいな桜の葉を拾い、冬眠準備中のカメへのおみやげにする。 今週末には寒気がやってくるらしい。着々と集めた各地の落ち葉が入った袋に、上野の桜も入れて、冬を待つ。
11月のユーコさん勝手におしゃべり |