ユーコさん勝手におしゃべり

10月31日
 気候に振り回された10月がゆく。
 たいした数の服を持っているわけではないが、季節に合わせてタンスの中身の移動は必要である。
 10月の初め、季節との追いかけっこに負けない意気込みで、手をつけかけたが、今年は季節自体がズルズルと行ったり来たりで、雨ばかりよく降った。すぐに終るはずが一ヶ月たち、やっと、布団も服装も冬支度が終った。
 昨日、台風一過の青い空に、いつもより早目の木枯らし一号が吹いた。
 小庭の花壇も植え替え、飼い亀を放していた柵を取っていると、何人もの人に
 「アラ、カメさんは?」 と聞かれた。
 「もう コタツに入っているんですよ。 また春、チューリップの咲く頃に外に出てきます。」
 とカメに代わって応える。この時期、カメの友人の多さには、いつも驚かされる。
 人には四季があるが、うちのカメには、夏とそれ以外の2シーズンしかない。気温が20度を超えないと食欲もないが、25度を超えるとがぜん元気でよく食べ、毎年産卵する。
 春から夏は外でいろんな人に声をかけられ愛想をふりまき、秋の気配とともにエサを食べなくなる。10月に入ると、店の横のドアから家人が出入りするたびに、家に入れてくれと懇願する瞳を向けてはすり寄ってくる。
 私は 「まだいいよ」 と言うが、いつも店主が、「かわいそうだから」 と体を洗ってやり家に入れる。カメは、どこに行けば水が飲め、どにに行けばコタツにもぐり込めるかちゃんと知っていて、気温が高いと室内を闊歩し、寒いと布団から出てこない。もっと寒くなれば、意識もなくなり、戸外で冬眠する。
 近所の年配の奥さんが、
 「まーぁ うらやましい! いいわねぇ。私も春まで寝ていたい。」 と感嘆した。

10月4日
 本屋の戦いは、どこにどう詰めるか だ。 断捨離とは遠いところにある。
何が必要で何が不要なのかは、お客様が決めることだ。誰かが、いつか要りようになる、それが誰なのか、それはいつなのかは分からない。
 本はただ眠っているように見えるが、時々フトその棚に注文が入り、順不同に送られてゆく。
 夕べ新着の本を書庫に詰めに行き、どうしてもはみ出した一群を棚からいったん出した。残り少なくなった全集の端本で、まとめてあった時には一棚を占めていた。置き場所を探して、壁際の空きスペースに移した。
 「ここに置いたことを忘れないようにしなくちゃな。」
 と自分に言って、品番を確認して、夜遅く書庫を出た。
 今朝、パソコンを開けると、注文書の中に、夕べ見たその品番があった。
 私が触った時、遠いところで誰かがそれを検索した。本の移動や整理で本に触れると、その本が売れるというジンクスがあり、今日それがおきた。
 本屋の幸せは、こんなところにある。

9月のユーコさん勝手におしゃべり
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