ユーコさん勝手におしゃべり

1月30日
 あいさつは、「寒いですね」。
 誰と会っても、朝でも晩でも、道でも店でも、「寒いですねぇ」で同意する。
 年明けから先週まで乾燥注意報が続いていた東京だが、先週末雨が降り出したかと思うと、二日間絶え間なく降り、土曜の晩、雷鳴とともに降雪した。大粒の雪がボコボコと降り、日曜の朝は異例の積雪となった。既に氷化した雪をスコップで掻き集める音が商店街中でした。道路脇にできた小山は固まったまま一週間もそこにあった。風も空気も冷たいまま天気は回復し、ようやく雪の小山も数えるほどになった。
 例年なら、もうただよっているはずの梅の香も今年はまだ届かない。沈丁花のつぼみも小さく、春はどこかで足踏みしているらしい。
 足踏みしていても、いつかは来る。寒さで縮む心身にいいきかせ、今日は雪で傷んだプランターの手入れをした。
 さつきの花芽がしっかりと上を向いていて、今年も風薫る五月が来ることを約束していた。

1月19日
 おととい、オダギリジョーとチャン・ドンゴンの映画「マイウェイ 12000キロの真実」を観た。2時間半の映画で、見る前はちょっと身構えたが、長く感じなかった。
 終始変わらぬキム・シュンシク(チャン・ドンゴン)と刻々変化する長谷川辰雄(オダギリジョー)の表情の対比が、物語を上手く牽引していた。
 一日おいて、今朝、上野の国立博物館へ出かけた。実は先週も来ており、今日はリベンジだ。中国が誇る至宝「清明上河図」が初めて国外にでるとて、大人気の故宮博物院200選展である。
 先週は9:30開場のところ、9:40に行ったら既に入場90分待ちであった。午前中に観て、午後は仕事をするつもりだったので、諦めて法隆寺宝物館と資料館へ入った。同じ博物館の中のすぐ隣の建物だというのに、こちらはシーンと静かで人の数も片手の指で足りるほどだ。資料館でじっくり図録をめくり、「清明上河図」の予習をした。博物館を出る頃には、入場待ちの時間は200分と表示され、入り口の係員におばさまが、「200分て何時間よ、わかりにくいわね!」と八つ当たり的に詰め寄っていた。
 今日も開館前に行ったが、既に長蛇の列ができていた。覚悟していたし、天気もよかったので気楽に待った。逆にきちんと入場管理・制限されているので、入ってからは満員感がなく、見ごたえのある展覧会となった。
 予定通り午前中にひきあげ、食事をして、店を開けた。
 1000年たっても人の営みはかわらない。経済活動をして戦争をして、一人ひとりみんな違う幸せがあり苦しみがある。いったい自分は今どこにいて何をしているんだろうと、足元を見て不安になったり安堵したり感謝したり、小さく大きく、いろいろ考えてはまた本を読みたくなる、心の忙しい今週である。

1月8日
 今受験シーズンだということを、新聞の折り込みチラシから知る。
 菓子パンのコーナーに「ウカロール」とあり、「モカロール」の間違いじゃないかと思ったが、別のスーパーチラシの蜜柑のところに大きく「ノーワックス・すべらない!」と書いてあって、理解した。
 近所のスーパーへ行ったら、よく週末に駅弁売り場となっているところにカツサンドばかりが各種並んでいた。
 この時期スベルは禁句なら、敷居すべりなんかは売りにくかろう。この季節だけ「滑る」を「統べる」と書き換えて、「トータルでうまくいく」ってことにしたらいいんじゃないかとか、いらぬことを考える。
 実際受験生はそんなダジャレで遊んでいる場合ではなく、せいいっぱいの自助努力中だろう。
 自力突破した先に、必ず、幸せはある。そこがいずこであっても、だ。

1月4日
 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 今年も、無意識のうちにパソコンのキーボードを2011とたたいてしまう指をなだめて、「2012」と調教する3ヶ日でした。
 年明け2日はバイクの初乗りで江戸東京博物館へ出かけました。2日・3日は寄席芸の舞台も立ち、江戸から明治時代のコスチュームの方々が行き交う新春の趣向です。ちょんまげの町人さんから、「枕の下に入れていい初夢を」と宝船の絵をもらいました。
 帰りは向島でイタリアンを食べて帰宅。いつものように本を抱え、まくらの下に宝船の絵を入れてふとんの中へ。年末から山本七平を読んでいます。「人間としてのブッダとキリスト」の段は面白くページが進むのですが、古代ユダヤ教のお話になると興味深く読んでいるにもかかわらず、すぐまぶたが下がってしまう。気付くと眠っている始末で、仰向けで胸の上に置いた本が倒れ、鼻にぶつかって「ア、イテッ」と一瞬目が覚めました。そのまま栞を挟んで就寝。
 初夢を見ました。玉乗り曲芸団の夢でした。山あいで興行する小さな曲芸団で、場所はなぜか群馬でした。
 朝鏡を見ると、鼻の頭に小さな内出血ができていました。去年と同じところです。ハードカバーの本を掲げたまま眠ってしまいできた傷跡です。薄くなってきたなと思っていたところだったのに、また赤くなってしまいました。
 年はかわっても、人はかわらない。
    去年今年 貫く 棒の如きもの (高浜虚子)
 です。

12月のユーコさん勝手におしゃべり
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